伸縮装置は補修工事をする場合、1日で施工を完了させてます。
そのためには、既設伸縮装置を撤去して、新設を据付け、ジェットコンクリートを打設して、
3時間強度を確認してから解放するまでの作業を9時から17時までの間に完了させる必要があります。
今回は、実際に伸縮装置の施工管理をしている私が詳しく仮説します。
・幅員は5m以下程度
・設置する伸縮装置は小規模から中規模遊間に適用する伸縮装置
・県、市町発注工事
初めて伸縮装置を施工する人はあらかじめ頭の中に、段取りを入れておくと良いでしょう。
9:00~11:30 飛散養生、カッター、はつり(既設伸縮装置撤去)
取り壊しを完了させるまでが一番の山場です。
飛散養生
伸縮装置を補修する際は、片側交互通行となることがほとんどです。
つまり、一般に通行する車両の真隣で、コンクリートをはつる作業をしなければなりません。
そのため、伸縮装置補修工を実施する際は、まず最初に、飛散養生を構築します。
業者によってやり方は異なりますが、飛散防止ネットを道路側、上流側と下流川、天端と4方向を囲って、徹底的に飛散物対策を実施します。
カッター
新設伸縮装置の後打ちコンクリート設置幅に合わせて、カッターラインを入れていきます。
基本的には、設計図面通りで問題ありませんが、既設の伸縮装置の幅がそもそも広めだったりすれば、それ以上の幅を設定したりもします。
ダメなわけではないのですが、カッターラインは舗装上になることが多いので、新設伸縮装置の後打ちコンクリートを舗装の型枠で施工することになり、コンクリートのラインが綺麗に出ないことがあります。
より綺麗な仕上がりにしようと思ったら、カッターラインに5cm程度余裕を持たせ、桟木等で型枠を設けます。
そうすることにより、綺麗な型枠のラインができ、コンクリートのラインが真っ直ぐ綺麗な状態をつるくことができます。(橋面舗装を同じ工事で施工する場合)
はつり
既設伸縮装置の後打ちコンクリートや、既設の伸縮装置自体をはつりによって撤去します。
この時は一番注意が必要です。
施工する前に設計図面や竣工図等をチェックすることはできますが、予想外の太い鉄筋が出てきたり、埋設管が出てきたり、岩が出てきたり😂
ここのトラブルを乗り越えることができれば、あとは他の現場と同じ作業を繰り返すだけなので、ここが山場です。
GLから150mm下に、φ800の鋼管が6本(500ピッチ):某市内
前後には確かに電力会社のマンホールがあるものの、橋軸直角方向に6本ずらりと出てきた時はびっくりしました・・・。
なんとかアンカーを削孔して、伸縮装置を設置することは出来ましたが、出てきたときは冷や汗でした・・・。
既設伸縮装置の下から御影石!?:市内
既設の伸縮装置の橋台背面側がアスファルトで施工してある伸縮装置でした。その時点で違和感はあったものの、通常通りはつりを実施して行ったところ、GLから250mmほど取り壊したあたりから、御影石の板が、橋台のパラペット上にずらりと並んでいました・・・。補修対象の橋は竣工60年を間近とした橋で、かなり古かったとはいえ、驚かされました。
新設の伸縮装置はアンカーボルトを打ち込んで、溶接にて固定することによって固定する必要があります。
当然石にアンカーを打つことはできないので、ギリギリ石が出てくる前までで削りを止めて、浅いコンクリートにアンカーを効かせて固定しました。
11:30~13:30 新設伸縮装置設置、アンカー削孔、配筋溶接
ここからは一気に作業が進んでいきます。
新設の伸縮装置を縦断横断の位置や角度、据付高さを合わせて設置します。
その後、数カ所アンカーボルトを先に打ち込み、位置が確定した時点で、仮固定をする段取りで進めていきます。
既設舗装にはわだちがあり、幅員3〜5m程度の狭い範囲でもどこに合わせるかによって全体の仕上がりは大きく変わってきます。
事前に、元請け業者や発注者と、どん高さに合わせるべきか入念に打ち合わせを実施しましょう。
13:30~15:00 ジェットコンクリート打設、左官仕上げ
設置が終わってしまえばあとは、ジェットコンクリートを打設すれば完了です。
位置を合わせた新設伸縮装置のフェイスプレートに合わせて左官仕上げをしていきます。
最後の仕上げをする際は、ジェットコンクリートメーカーが支給してくれる被膜養生剤を散布して、クラック対策をします。
基本的にはジェットコンクリートの材料を撹拌開始した時間から3時間で圧縮強度の試験を実施するので、攪拌開始が15時までに開始できるようになんとか頑張ります。
伸縮装置の施工現場には、ジェットモービル車と呼ばれる12mくらいある巨大な車両で材料を運搬・攪拌します。
ジェットコンクリートは最近の機種だと大体1.9m3は対応することが可能ですが、一度にたくさん伸縮装置を施工する場合はコンクリート数量にも注意が必要です。
ジェットコンクリートの硬化時間は効果遅延材を入れる量によってコントロールしているので、暑中であっても寒中であっても、3時間程度でちょうど強度が発現するようにコントロールしてもらっています。
変な話、硬化遅延剤を一切入れなければあっという間に固まってしまうらしいです。
15:00~16:00 地覆シール材施工
ジェットコンクリートの試験時間を待ちつつ、地覆シールを施工します。
最近の伸縮装置は基本的には地覆ジョイントを施工します。
地覆ジョイントを地覆の内側2cm程度のところまで入れ込んで、面を地覆シールで整えるような形です。
伸縮装置が複数ある場合、最終日に全てのシール材を仕上げる必要があるので、規制が必要な範囲はその日中に終わらせなければならないのでのんびりやることはできません。
シールは意外と足りなくなることが多々あるので、設計数量よりもちょっと多めに頼んでおくと良いでしょう。
16:30~16:45 3時間強度試験実施
3時間ぴったりで、圧縮強度24N/mm2以上が発現すれば、交通解放して施工完了です。
実際に試験をする際は、油圧の圧縮試験機によって圧力をかけて、ある一定のラインで圧縮力が止まった時の値を圧縮力としています。
本当に圧壊させようと思うと、それ以上の値が出ますが、そんなことをすると試験がすぐ壊れる原因になってしまうようなので、通例そのようにしているようです。
つまり、実際に3時間時点では、基準値である24N/mm2よりも大きい値が確実に出ています。また、圧縮強度は養生時間が長いほど強度が上がっていくものなので、3時間未満で壊したとしても設計基準強度を上回っていれば問題ないという話になります。
私が担当した現場ではほとんど2.5時間で潰してしまっていますが、問題なく設計基準強度を上回っています。
とんでも無く早い時間で交通開放できるんじゃね?
まとめ(伸縮装置補修工は慌ただしい)
即日解放を約束する急速施工が基本の伸縮装置補修工。
一連の流れを見てみていかがだったでしょうか。
伸縮装置補修には、一般的に二次製品を補修するパターンと、フィンガージョイント(鋼製桁一体型伸縮装置)を補修するパターンで大まかに二分することができますが、後者の場合は、施工に当たっての留意点などかなり変わってくるのでまた後日紹介させていただきます。
初めて伸縮装置を施工する人の助けになれば幸いです。